思惟漏刻

本のおすすめと思考とっちらかしサイバーデブリ

分かりやすい悪を叩く

ツイッターをやっていると時たま思うことですが、分かりやすい悪者を叩くのが好きな人がちょっと多すぎる印象があります。 誰の目にも悪いと分かる悪者を仕立て上げてタコ殴りにして、気が済んだら放ったらかしという態度はどこででも見受けられるので、ツイ…

『豊かさのなかの自殺』ボードロ,エスタブレ

『豊かさのなかの自殺』という本をとりあげたい。 実のところ、まだ読み途中なのだが、興味はあるのに読み進まなくなってしまい、一度考えを整理して明らかにしておく必要を感じた。さしあたりは現場までの要約をしておく。 // タイトルにある通り、本書は豊…

『真実の終わり』ミチコ・カクタニ

昨今のコロナウイルス騒ぎの混乱は世界規模に拡大している。 日経平均やダウ平均は急降下し、ニューヨーク株式市場は石油危機以来初となる取引の一時中止措置をとった。各種イベントに対して自粛要請が出され、多くのイベント関係者に大損を抱えさせている。…

もしもし(ニコルソン・ベイカー)

ハルキストに朗報だ。 村上春樹っぽい雰囲気の村上春樹のではない小説を発掘した。 それが、これ。ニコルソン・ベイカーの『もしもし』 村上春樹と言えば特有の文体で、不思議にも極端に評価が分かれる。 最近は「〜〜かもしれないし、そうじゃないかもしれ…

「してあげる」ベースから「させていただく」ベースの関係へ

長文なのであらかじめ話の内容をざっくり述べておく。 友人や恋人などとの仲がこじれることはままあることだが、ある種の問題については「〜してあげたのに」と無意識に見返りを求める態度が不仲の原因である。 代わりに「〜させていただく」という態度を取…

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

映画『フロリダ・プロジェクト』 の感想 途中からネタバレ 冒頭までのあらすじ フロリダの某所でムーニーは同じ年頃(小学校の低学年くらいと予想される)の子供たちとやんちゃばかりしている。髪を染めた若い母は無職で、母娘二人暮らし。同じモーテルの友…

『夢を与える』 綿矢りさ

久々にネタバレをしながら本を紹介する。 ネタバレをするのは、この本が予想外なオチを期待して読む本ではないと判断したからだが、あくまでも個人的な判断である。 それから、このブログで本を紹介するときは「読んだはいいがこの本の何がそんなに良いのか…

一般の方という不快な言い回し

「一般の方」という言い回しに引っかかりを覚えることが多い。 最初にそう思ったのは村上春樹がオウム真理教の元教団員たちにインタビューをしてまとめた『約束された場所で(underground2)』にあとがきで述べていたことだ。このブログのかなり初期にも紹介し…

思惟漏刻 [モテるとはどういうことなのか考えていた]

友人と久々に会った。久々にと言っても他の人も交えた集まりで二週間くらい前にも会ったのだが、以前は毎日のように会っていた間柄であるし、大勢の中に紛れているのと特に気心の知れた数名の中の二人とでは雰囲気も異なるものだ。 近況報告というほどでもな…

母の日ということで

母の日にかこつけて文章でも書こうかと久々にブログを開いたら、今週のお題「おかあさん」とあった。 やはり身近な人に思いの丈をぶつけるのは何かきっかけが必要なんだなぁと改めて思う。 不特定多数に発信するメディアで一人に向けてメッセージを送るのが…

私の恋人(上田岳弘)

習慣的に本を読まない人から見ると、読書が好きと言う人は知的なイメージになるような気がする。 僕が人よりだいぶたくさん本を読んでいる自覚はあっても読書家ですと名乗りたくないのもその辺の消息のためだと思う。 ただ、趣味は読書ですと言うことも実は…

ずっとお城で暮らしてる (シャーリィ・ジャクスン)

読む本を選ぶときの基準はなんだろうと振り返ってみると、僕の場合、どうもマイナーながら味わい深い文学を発掘したいという気持ちが根底にあるようだ。 例えば、大通りから少し外れた路地にある隠れた老舗であったり、客が少なく心ゆくまで羽を伸ばせる静か…

思惟漏刻 [破滅的不眠症]

眠るのが苦手だ。 眠るのが、というよりは睡眠にまつわる全般が苦手だ。眠ること自体は好きなのだが、苦手なのだ。特に。その周囲の諸々が。 夜は寝付けず朝は起きれない。シエスタなど器用な真似はできない。休日は当然のように昼まで寝る。一時期は毎夜、…

あなたの人生の物語 (テッド・チャン)

言霊というのがある。 祝詞のような霊力の宿った言葉が言霊と言われ、それを唱えることで人智を越えた力が生じる。僕はそんな理解をしている。 けれど、ネットで調べると、単純に言葉が人間に影響することくらいの意味合いで使われている様子だ。「死ね」と…

青少年のための自殺学入門 (寺山修司)

ハイデガーは人間を「死への存在」と呼んだ。 大雑把に、死を意識することでより人間らしく生きることができるというような意味で、大雑把な理解なりに「そんなもんか」と思っていた。 ハイデガーの文章は読んだことがないが、クセのある文章が彼のカリスマ…

思惟漏刻 [走る社会性動物]

考えたことを書く。言うなればエッセイのようなものをしてみようと思う。 以前から、自分でノートに書き散らかしてはいたのだが、放ったらかしになっていた。それもそのはず。汚い字にまとまりのない文章だから読み返す気にならない。他人に見せることを意識…

共喰い (田中慎弥)

自分にぴったりなものがちょうどいいタイミングで自分のもとにやってくる、なんてことがたまにある。 些細な例で言えば甘いものが食べたいなと思いながらも自制心を働かせて買い食いは我慢して帰ってみると、母親が知り合いからクッキーをもらったのを分けて…

アイマスPの違和感

突然ですが、僕はデレステのPです。 デレステとはアイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージのことで、Pとはプロデューサーで平たく言えばプレイヤーです。 要するにスマホのアイドル育成ゲームをやっておりますということです。 (ちなみに…

ジャッカルの日(フレデリック・フォーサイス)

暗殺者というのは言い知れぬ魅力がある。 殺しは往々にして悪いことであると分かっていても、キャラクターとして映画や小説に登場するとわくわくする気持ちがどうにも出てしまうのだ。 『LEON』は最高だった。幼き日のナタリー・ポートマンの迫真の演技とジ…

いまさら2017年を振り返りまして(映画おすすめ5選)

あけましておめでとうございます と、言うには少し遅過ぎるのは先刻承知のうえでございます。 今回の年末年始は、寝正月を先制スタートを決めるべく、年越し前からぐだぐだしており正月もテレビを見ることすらなく初詣に行くでもなくしていたことと言えば引…

全滅脳フューチャー

アニメオタクは底辺。 そんな時代はもう終わりつつある。『電車男』に端を発したオタクの逆転劇は様々に世に出てきている。 『桐島、部活やめるってよ』なども中心的人物であった桐島が居なくなり、スクールカースト最上位層があたふたする一方で、クラスの…

スタッキング可能 松田青子

女性らしい感覚というのがある。 女性として生きるには、男性的にはわざわざ言ってもらわないと分からないような理不尽さを感じていることがある。らしい。 会社でお茶汲みばかりさせられて面白くない、くらい分かりやすければ「うんうん。つらいね。頑張っ…

へヴン

いじめはよくない そりゃそうだろう。だが「いじめはよくない」の一文に何の意味があるだろうか? この一文でいじめっ子が己の悪事を自覚して、反省し昨日の敵と仲直り、なんてことはあり得ない。 第一、いじめてる側も自分のしてることがいじめだと気づいて…

働く男

星野源さんの一冊。 自分がほぼテレビを見ない生活をしているからか逃げ恥で有名になる前は、なんか歌手とかもしてる人としか知りませんでした。 本を書いているも知ってはいましたし、評判が良いのも聞いてましたが、歌手に俳優に執筆業とは節操が無いなと…

たつき監督降板騒動を受けて

事態は収束しつつあるようですが、けものフレンズの立役者たるたつき監督の降板騒動を受けてカドカワに対する態度を表明させていただきます。 そもそも、けものフレンズは吉崎観音さんのキャラデザインを原型にヤオヨロズ所属のたつき監督を主導として製作さ…

隷属なき道

普段は小説ばかり書評していますが、良いものは小説であれこういう学術書であれ紹介していきますね。 本書のタイトルは省略なしだと『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』と、言いたいことを全部詰め込んだようなタイトルです…

愛のむきだし

今回は映画 園子温監督の『愛のむきだし』 世間的には満島ひかりを大抜擢したのが評判らしく、個人的には監督がとても尖ってて面白いのでずっと気にはなっていたのですがなかなか観れませんでした。 と、言いますのもこの映画全部で4時間くらいあるんですね…

2016年読んだ中で最強の激ヤバ本

あけましておめでとうございます。 最近は読書ブログだと言うのにめっきり本の感想を更新しておりませんでした。ふがいないです。 ですが、読むのはちゃんと読んできたわけで去年は漫画を抜いて124冊と、まぁ自分的には読んだ方だと思っております。そして、…

冷たい熱帯魚 園子温

今回は映画です。 まず、見てない人へ ネタバレします。楽しみにしたいならこの先は読まないでください。 それから、とってもグロくてエロっちいです。普通に臓器が出てきたり血がブッシャーってなるシーンとか女の人の裸(モザイク無し)とか出てきます。そ…

ペスト(カミュ)

カミュのペストです。 異邦人で有名ですね。見た目の薄さから気楽に手を出してよく分からないまま終わると有名な異邦人ではなく、今回はペスト。 ペストとは致死率・感染力ともに重篤な被害をもたらす感染症で、作中ではペストが蔓延した街の人々の様子を手…


にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へにほんブログ村
広告