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よみしろの読む城

好きな小説を好きなだけ褒めちぎります

友情 (武者小路実篤)

オススメ本

あらすじ(ネタバレ含む)

野島は美しい娘、杉子に出会い一方的な恋に落ちる。積極的に関係を築いていきたいと思いながらも鬱陶しく思われることを恐がり、進展のない日々を過ごす。そうした煩悶を親友の大宮に打ち明け、協力を仰ぐがなかなか首尾は良くない。ある日、大宮が海外へ留学に行ってしまう。大宮が海外へ行ってしばらくし、杉子が結婚するのに良い年齢にさしかかったため、野島は杉子に結婚を申し込むが断られてしまう。野島は大宮からの手紙で杉子が大宮に対する熱い愛情を抱いており、大宮もそれを受けることにした旨を伝えられる。

 

 

 

武者小路実篤って厳つそうな名前だけで嫌厭していたのですが、なんとも繊細な恋愛模様を綴っておりました。これがギャップ萌えっていうやつですかね。

 

 僕の中に妙に残っているのがありまして、恋に悩む野島が石切をする場面です。水切りとも言いますが、あの水に石を投げて何度も跳ねさせるやつです。

野島は一人で石切をしてこの石が3回以上跳ねたら恋が成就すると念じて、失敗します。「こんなことはあてになるものか」と思いつつ縁起が悪いものだから今度は奇数だから一緒になれるのだと信じ直して3回目に挑戦してようやく3回跳ねたら「運がいいぞ」と自分を騙します。かといって1回目での成功ではなくて気持ちが悪いからと、今度は砂に書いた杉子という字を波が10回来ても消されなければ大丈夫とやり直します。

 

何にも変わらないことが分かっていながらそんなことで一喜一憂してしまう、弱い人間。その弱さゆえに嫌われる覚悟を持てず、自分が大宮によって評価を上げてもらうことしかできないの不公平さに苦しみます。そしてせめて公平に誠実にいこうとして大宮を褒めてみたり、あえて作ってもらった機会を避けてみたりして自分をごまかしています。

 

 野島が杉子に好かれたいのにも関わらず、嫌われるのを恐れていたと上に書きましたが、もちろんそんなに単純じゃないんですよね。本当に自分が杉子にふさわしい人間なのだとしたら、杉子の方でも同じように自分を好いてくれるはずだと思っていたりします。夢想気味な潔癖さを感じますが、よく言えば純情です。


美しく完璧な女性である杉子に見合う人間だろうかと幾度となく躊躇う場面にとても共感してしまいました。弱くて、弱さを自覚しているけど、どうしようもならないからせめて正直でいようとして、空回りしかできない、報われない人間像を見ました。


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