思惟漏刻

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蠅の王 (ゴールディング)

初の海外文学です。ゴールディングの『蠅の王』

 

淡白にまとめると、原発戦争の最中、子供たちを疎開させる飛行機が不時着し子供たちが無人島での生存を余儀なくされる話です。

 

自分が読んだ訳ではないので言いにくいですが、『十五少年漂流記』に影響を受けたそうですね。大人たちのいない無人島でのんびりと暮らす...なんて生易しい話ではありません。おどろおどろしいものです。

 

少年たちは遭難場所を見つけてもらうために煙を焚いたり、話し合いを円滑に進めるために発言者がホラ貝を持つようにしたりといろいろな工夫をします。

ところが、意見の食い違いや優先度の不一致から亀裂が生じ始めます。派閥が形成されたり、食料を交渉材料にし始めたり、果ては武装し対立状態に。

 

『蠅の王』を読んでいても、「まだ子供なのにそんなひどいことをするはずがない」とは思いませんでした。むしろ、人は生まれながらにして欠点を持っていて、それが分からないからこそ対立を極めてしまうのだと訴えられているようでした。

 

忘れてしまいがちですが、子供たちのドロドロした奮闘の裏で、原発戦争が起きています。無人島でのおどろおどろしい世界を見た後では、大人の世界もまだまだ未熟で、それどころかもっと大規模に悪が跳梁跋扈しているような絶望を感じます。


そう。忘れてはいけないのがタイトルにもなっている"蠅の王"ベルゼブル、悪魔の首領のようなポジションの存在です。作中では人の心に巣食う悪の権化と、僕は読みました。

 

個人的にはそこまでグッと来るシーンではなかったのですが、いくつかレビューを見た感じでは蠅の王との対話シーンは鮮烈な印象を与えることが多いようです。読まれる際には期待しておいてもいいのではないでしょうか?

 

蠅の王が出てくるシーンよりむしろ、作品全体の壮絶さは物凄くて、読後に与えたインパクトにやられました。随分と前に読んだにもかかわらず心にズシンと残っている作品です。

 

 


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