よみしろの読む城

好きな小説を好きなだけ褒めちぎります

窓の魚 (西加奈子)

西加奈子さんですね。

 

僕は最初、見つけてきた評判から判断して西加奈子さんは救われる物語を描く人だ勝手に思っていました。はたして読んでみるとなぜか心地よくて、よくよく改めて見ると、こっそりと救いが散りばめられているからなのかと思いました。

 

『窓の魚』は温泉旅行にカップル2組が行って、4人それぞれの心のうちを描くといった内容です。1人につき1章割り当てられているのですが、各章の間にその4人以外の人の語りが少しだけ入り、それが物語にとてつもない深みを出しています。

読み終わったあなたは深みから上がって大きく深呼吸することでしょう。

 

構成としては『藪の中』のようで、4人の視点で同じことが語られている一方で、それぞれの述べる事実関係に食い違いが多々見られます。いろいろ忘れないうちに一気に読むのがおすすめ。

 

この食い違いというのが、『窓の魚』のおもしろいところのまず1つ目。 

ある1人の発言が言われた側だと違う言葉になっていたり、本人が意識もしてないことが相手の心にすごい影響を与えていたり、ある言葉に対する反応が4人バラバラだったり。

やっぱり他人のことなんか分からないし、意図せずしたことこそが周りの人に影響を与えるものですよね。心の中でうんうんと言いながら読んでました。

 

もう1つすごくよかったのが4人以外がする語りです。

1人目の章の終わりに始まる語りで突如立ち現れるもう1つの物語がまた素晴らしい。読者はそれ以降同時に2つの話の虜にさせられます。僕はあの世界にどっぷり浸からせていただきました。

 

全体を通して薄暗い雰囲気なのになぜか幸せを感じてしまいます。以前の記事で、小川洋子さんの『猫を抱いて象と泳ぐ』でも同様なことを言いました。

neffle.hatenablog.com

 

僕の個人的な印象ですが、単純な幸せ物語では他人事に思えてしまいます。苦しんだけど最後に報われた、くらいでは自分に置き換える事ができなくて、つまり西加奈子さんや小川洋子さんは悩み方がリアルなんですよね。だから響いてくる。

とはいえ、『窓の魚』と『猫を抱いて象と泳ぐ』とは別の趣きを感じます。どっちもいい。

 

要するにオススメです。

 

 

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