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よみしろの読む城

好きな小説を好きなだけ褒めちぎります

少女地獄 (夢野久作)

夢野久作『少女地獄』です!

 

夢野の代表作ですね。ネタバレ含みます。

ちなみに、読むと一度は精神に異常をきたすと名高い『ドグラマグラ』も読みました。因果関係は認めませんが鬱に近い状態にまではなったので、その噂に関してはなんとも言いがたいですね。

 

いや、そんなことはどうでもよくて、今回は『少女地獄』です。

こちらは『なんでもない』『殺人リレー』『火星の女』という三部構成となっており、それぞれの話はつながっているわけではありません。有名なのは『なんでもない』に出てくる虚言癖の女の子、姫草ユリ子です。

 

僕が喋りたいのはユリ子(脳内では美少女)についてです。

 

ユリ子は臼杵医院にやってきた看護師さん。気は利くし、患者さんには好かれるしで、臼杵医院はユリ子のおかげで繁盛しているといってもいいくらいになります。

 

ところが、ユリ子はあの手この手でいらぬ嘘をつきます。実家が酒造屋で金持ちだとか兄がよろしくとやってきたとか。

しかも、その辻褄を合わせるために嘘を重ねます。お金を実家から送られてきたお酒(高級)とか兄の手みやげのカステラ(高級)とかを自腹はたいて買ってきます。

 

で、結局ばれちゃうわけですが、それは「ユリ子が前に勤めてた病院のお医者さんが臼杵先生によろしくと言っていた」みたいな嘘が瓦解していった結果です。

このときもなかなか手の込んだ嘘のつき方をしていて、読者的には一体何がしたいのかしら?といった感じです。

 

ついにはユリ子は失踪し、別のところで自殺します。ただし自殺も虚言ではないかという見方もあるようですね。

 

臼杵先生は振り返ってみて、騙されたにもかかわらずユリ子のことを憎みきれないと言っています。

ここで名文

彼女を生かしたのは空想です。彼女を殺したのも空想です。 

 

 

さぁでは、僕はどう読んだか。

言い換えれば僕の心にやってきたユリ子はどんな娘か。

 

まずユリ子は他人から褒めてもらったり認めてもらったりすることでしか安心できない女の子と見ています。ムズカシイ言葉で言うと承認欲求が激しいということです。

 

なぜわざわざいろんな嘘をついたのか。しかも、一見無意味で自分のためにもならないわりに、自分の身の危険を増すばかりの嘘を。

(それさえなければもともと人気者だったから順風満帆な幸せ生活だったのに…)

 

それは、少しでも信頼を勝ち得たかったから。

 

承認をもらうことでしか自分を認めてあげることができなかった彼女はいつもいつも周りから褒めそやされていなければ不安でしょうがないのです。

一つ二つのことで認めてもらえた程度では足りません。それに、どれか一つ(例えばユリ子の生い立ち)でも厭われるのは嫌なのです。

周りの人に認めてもらうためだけに生きているのだからお酒とかカステラとかに奮発するのは当然のこと。言わば健気な女の子です。方向性が間違ってるけど。

 

 

彼女を生かした空想というのは<周りがユリ子を尊敬してくれている。好意的に思ってくれている。>という空想です。

彼女を殺した空想というのは<周りの人の信頼を失ってしまった。ユリ子にはもう存在価値はなくなってしまった。>という空想です。

 

よく、他人の目を気にするなんて言い方をされますが、僕はその極地としてユリ子を捉えています。

他人からの評価でしかものを見られない人・自己評価と他人からの評価がごっちゃになっている人。そういう人は幸せになんかなれなくてどこかに”無理”が生じてしまう。

 

ユリ子の”無理”は嘘の瓦解として現れていますが、現実にはもっと別の形で(しかし同じ構造で)”無理”が出ている人は多いのではないかと思います。

 

こんな感じで、僕は『少女地獄』を通して他者の評価に固執する怖さに思いを馳せたのでした。

 

 

ちなみに、いろいろ無視してる要素は多いです。ユリ子が嘘をつくのが生理のときに限られることとか。

分かっているとは思いますが、僕が相当自由に味わった結果ですので、ちょっとした読み物として読んでいただければ幸いです。

 

 

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