よみしろの読む城

読んでもわからない人へ送る「僕はこう読み考えた」

約束された場所で (村上春樹)

さて、第一号は表題の通り『約束された場所で』村上春樹さんの本です。

地下鉄サリン事件の加害者側へのインタビューをまとめたもので、被害者側へのインタビューをまとめた『アンダーグラウンド』の続編にあたります。インタビューらしい生々しさや重さがあり、読了後は空恐ろしい思いに駆られたものです。

あとがきで村上春樹さんも書いていましたが、加害者たる元(あるいは現)信者たちはよく「一般の方」という言い回しをしていました。

彼らは自分たちが特別な事情を抱えた普通でない人だと無意識的に考えているのです。彼らは他人も自分と同じような特殊な事情を抱えている可能性を想定できておらず、自分がしたことはよくないことだけど、と留保しつつも「普通の人」にはわからないだろうというような他人を見下ろすような態度が感じられました。

読んでいて自分や周囲の人たちにも同じような傾向があることに気づき寒気を感じました。

例えば「あの人はこういう考えしかできないんだよね」とか「みんな自分の定規でしか測れないんだよね」といったことを平然と言ってのけてしまう人は多いですが、それこそ自分の定規で測った結果を正しいと信じているわけですよね。自分のことは棚に上げて。

しかもそのことに気がついていない。僕には彼らの考え方の構図はオウムの信者と同じに感じられるのです。

そういった性格をもった人たちが、漠然と抱いていた不安を明確にしてもらえて同調していき、やがて同調していったケースがオウム真理教の信者たちだったのだとこの本を読んで感じました。

つまり、僕が感じた空恐ろしさとは先程述べたような、誰もが少し過程を間違えれば加害者側になりうること、それに気づいていないこと、なにより僕自身も予備軍であったことです。

だから宗教が怖いとかうさんくさいとか言うのは的外れで、他人の事情を考えられない(共感ができない)人が多いということや、盲目的な同調をしていることに気づけないことの方がオウムの発生原因の本質に近いのだと考えています。

『約束された場所で』は生々しさゆえに現実味を帯びて考えさせられた本です。

 


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